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糖尿病

糖尿病とは

糖尿病とは糖尿病とは、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが不足している、または十分に作用しないために、血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が慢性的に高くなる病気です。
高血糖状態が続くことで、血管がもろく硬くなる動脈硬化が進行します。適切な治療を受けずに放置していると、心筋梗塞や脳卒中、さらには網膜症・腎症・神経障害といった危険な合併症のリスクが高くなります。

ブドウ糖とは

私たちが活動するための大切なエネルギーであり、常に血液中を流れています。全身の各臓器に到達すると、インスリンの作用によって細胞に取り込まれ、エネルギーとして活用されます。
血液中のブドウ糖の高い状態を高血糖、低い状態を低血糖と言います。

インスリンとは

膵臓のβ細胞で作られる、血糖値を下げることのできるただ一つのホルモンです。
食事によって血糖値が高くなると、それに反応してインスリンが分泌され、各臓器における細胞へのブドウ糖の取り込みを助けます。加えて、余ったブドウ糖を中性脂肪などに変換し、身体に蓄えておく働きを持っています。

糖尿病の原因と4つの種類

糖尿病は、その原因に応じて、「1型糖尿病」、「2型糖尿病」、「その他の特定の機序、疾患によるもの」、「妊娠糖尿病」の4タイプに分類されます。
国内の糖尿病の約95%が、生活習慣を主な原因とする2型糖尿病です。いわゆる、生活習慣病の1つに数えられるタイプです。

1型糖尿病

主に免疫の異常によって膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンが分泌されなくなることで発症する糖尿病です。生活習慣は関与しないため、10歳で発症することもあれば、70歳以降で発症することもあります。中でも、小児~青年期での発症が目立ちます。
治療では、インスリン療法が必須となります。

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2型糖尿病

遺伝的な体質に、食べ過ぎや飲み過ぎ、肥満、運動不足といった生活習慣の乱れが重なることで、インスリンの分泌量や作用が低下し発症する糖尿病です。ほとんどは、40歳以降で発症します。
治療では、食事療法と運動療法による生活習慣の改善が中心となります。必要に応じて、薬物療法を導入します。

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その他の糖尿病

遺伝子の異常、他の疾患、薬の副作用などによって血糖値が高くなり、糖尿病を発症することがあります。

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妊娠糖尿病

妊娠中に初めて発見された、もしくは発症した、糖尿病には至っていない血糖値の上昇を指します。

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糖尿病の症状

糖尿病は、初期にはほとんど自覚症状がありません。ある程度進行してから、以下のような症状が現れます。症状に気づいた時には、すでに初期を通り越している可能性が高くなるため、すぐにご相談ください。

  • 糖尿病の症状喉の渇き、多飲
  • 多尿、頻尿
  • 全身倦怠感
  • 手足のしびれ、痛み
  • 目のかすみ
  • 傷が治りにくい

糖尿病と合併症

糖尿病と合併症糖尿病のおそろしさは、その合併症の多さ・重大さにあると言っても過言ではありません。
適切な治療を行わないでいると、脳卒中や心筋梗塞といった直接的に命を危険にさらす疾患、神経障害・網膜症・腎症といったQOLを大きく低下させる疾患を合併するリスクが高くなります。
反対に言えば、適切な血糖コントロールができれば、合併症のリスクを抑えることが可能です。当然のことですが、糖尿病と診断されたら、その治療にしっかりと取り組んでください。

3大合併症とは

糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症という、糖尿病特有の合併症3つをまとめて、糖尿病の3大合併症と呼びます。いずれも、悪化するとQOLを大きく低下させます。
糖尿病と診断された時点で、これら合併症の有無を調べる検査を行う必要があります。

糖尿病の主な合併症

糖尿病性神経障害

糖尿病性神経障害とは、血糖値が高い状態が続くことで、手足などの神経に栄養を届ける血管に異常が起き、手や足の先のしびれや痛みといった症状が現れる病気です。
この症状は左右対称に現れる特徴があります。手足の感覚が鈍くなったり痛みが長引いたりする場合、足の細胞が死ぬ「壊疽」や足の傷が悪化して「足潰瘍」が発生する方もいらっしゃいます。
糖尿病の三大合併症の中でも発症しやすい合併症なので、何か気になる症状があれば早めに受診することが大切です。

糖尿病性網膜症

糖尿病性網膜症は、血糖値の高い状態が続くことで、網膜の細い血管に障害が起こる病気です。
初期では症状に気づかない場合が多く、そのまま進行すると網膜剥離や眼底出血を引き起こし失明する恐れがあるため、血糖値を管理して病状が悪化するのを防ぐ必要があります。また、年1回以上は眼底検査を受けて網膜症の早期発見に努め、網膜症が見つかったらレーザー治療等で悪化させないように管理します。

糖尿病性腎症

糖尿病性腎症とは、腎臓の細い血管が高血糖の持続によって障害を受ける病気です。
初期は無症状ですが、少しずつ腎臓の機能が低下していき、老廃物を体外へ排出することが難しくなっていきます。その結果、むくみや体調不良が現れ、さらに悪化すると人工透析をしないといけません。
早期に治療を行えば症状の緩和が期待できるので、定期的に腎臓を検査して、何らかの症状が現れたら、速やかに当院へご相談ください。

脳卒中・心臓病に繋がる動脈硬化

糖尿病で高血糖が続くと、動脈硬化を引き起こす可能性があります。
動脈硬化は、脳卒中や心臓病のきっかけになるので注意が必要です。動脈硬化を予防するためには、適切な糖尿病の管理とともに、生活習慣病である高血圧、脂質異常症、肥満をコントロールしなければいけません。
これらが合併した場合は動脈硬化のスピードを速めて、より脳卒中や心臓病が発生しやすくなります。

急性合併症

高度のインスリンの作用の不足によって、急激な高血糖をきたして発症する合併症のことです。
予防のためには、高血糖状態を招かないこと、高血糖状態になった時にはしっかりと水分を摂ることが大切です。

糖尿病性ケトアシドーシス

インスリンの不足によって血糖をエネルギーとして利用できなくなると、体は脂肪を分解してエネルギーに利用します。この時、血液中にはケトン体という物質が増え、酸性に傾くために、高度の脱水状態を引き起こします。これを、糖尿病性ケトアシドーシスと呼びます。
1型糖尿病の方がインスリン注射を打たなかった場合に発症するケースが多くを占めます。また2型糖尿病の方でも、甘いジュースなどを一気に、たくさん飲んだために発症することがあります。

高浸透圧性高血糖状態

血糖値が非常に高くなり、血液が濃くなった状態を指します。
高度な高血糖は多尿と脱水を招きますが、この時に血液が異常に濃くなり、高浸透圧となるのです。
これは高齢の2型糖尿病の方によく見られます。肺炎、尿路感染症、脳梗塞・心筋梗塞、急性膵炎といった疾患、高カロリー点滴、利尿剤・ステロイド剤の使用などがきっかけとなり発症することが多い病態です。

当院で行う糖尿病検査

問診

症状の有無や種類、現在の生活習慣、既往歴・家族歴などについてお伺いします。
直近の健康診断などの血液検査の結果がございましたら、お持ちください。

血糖値・HbA1c検査

血液を採取し、血糖値、HbA1cを調べる検査を行います。
当院では、結果が10分ほどで出る迅速検査を導入しています。

尿糖検査

尿中のブドウ糖の量を調べる検査を行います。
空腹時に値が高い場合には、ある程度の糖尿病の進行が想定されます。

診断基準

糖尿病の診断には、血液検査で主に次の4つの項目を測定します。

ヘモグロビンA1c(HbA1c) 過去1~2ヵ月間の血糖の状態を示す値
早朝空腹時血糖値 早朝に(8時間以上の絶食後)採血したときの血糖値
75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT) 75gのブドウ糖水などを飲み、その2時間後に採血したときの血糖値
随時血糖値  食事の時間と関係なく採血したときの血糖値


日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2019」では以下のように糖尿病を診断します。

「糖尿病診療ガイドライン2019」(糖尿病の臨床診断のフローチャート.日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2019」から引用)

血糖値が糖尿病型(空腹時血糖126mg/dl以上、随時血糖200mg/dl以上)、かつHbA1cが糖尿病型(HbA1c 6.5以上)であれば、一回の採血で糖尿病と診断します。それ以外の場合は、過去の糖尿病の検査結果を参考にしたり、別の日に行った検査等で診断します。

多くの場合、特に2型糖尿病では、ある日突然、血糖値が高くなるのではありません。はじめは正常範囲の血糖値だったのが、少しずつ高くなり、徐々に糖尿病の範囲まで高くなってきます。正常から糖尿病になるまでの段階は、血糖値の高さで、「正常型」、「境界型」、「糖尿病型」と3段階に分類されます。糖尿病の「境界型」は、HbA1c 6.5%未満で、1)空腹時血糖値が110~125mg/dL、2)75g経口ブドウ糖負荷後2時間の血糖値が140~199mg/dLのいずれかを満たしている方とされます。「境界型」の方は、「正常型」の6~20倍も多く糖尿病を発症するといわれており、将来糖尿病を発症する確率が高い状態です。

糖尿病の治療方法

糖尿病の治療の目的は、血糖値を適切にコントロールし、糖尿病の進行と合併症を予防し、QOLや健康寿命を守ることにあります。糖尿病にならないことが何よりですが、診断後は症状の有無に関係なく、治療と向き合うことが大切です。
糖尿病の治療では、食事療法・運動療法が中心となります。必要に応じて、薬物療法を導入します。

食事療法

食べ過ぎ・飲み過ぎを控え、適量の栄養バランスの良い食事を摂るようにしましょう。炭水化物・タンパク質・脂質に加えて、カルシウムなどのミネラル、ビタミンも意識して取り入れましょう。
早食いをしない、食べる順番に気を付ける(ごはんなどの炭水化物を最後に食べる)といったことも、血糖値の上昇抑制に役立ちます。
なお、1日あたりの適正エネルギー量は、以下の計算をもとに算出できます。
・1日の適切なエネルギー量(kcal)=目標体重(kg)×エネルギー係数
→目標体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22~25(年齢等によって適宜判断)
→エネルギー係数=軽い労作(大部分が座位の静的活動)=25~30 (kcal)
        =普通の労作(通勤・家事、軽い運動など)=30~35 (kcal)
        =重い労作(力仕事、活発な運動習慣)=35~(kcal)

運動療法

糖尿病治療における運動療法では、ウォーキングなどの有酸素運動と、筋肉にやや強い負荷をかけるレジスタンス運動を組み合わせることが大切になります。
ウォーキングであれば15~30分を1日2回行います。歩数でいうと、1日1万歩が目安となります。小まめに時間を振り分けて、楽しみながら継続しましょう。
レジスタンス運動では、脚、腰、背中などの大きな筋肉を中心に週2~3回の筋力トレーニングを行うのが目安となります。
上記の運動の種類・時間・強度はあくまで目安です。年齢、運動経験、ライフスタイルに応じて、お一人おひとりが継続しやすいメニューをご提案しますので、安心してください。膝が悪い方など、太極拳やヨガ、水泳などの運動に置き換えることも可能です。
また、ケガを予防するためにも、始めは無理をする必要はありません。

薬物療法

薬物療法で使用するのは、主に血糖値を下げる薬です。内服または注射で投与します。当院では、GLP-1受容体作動薬もご用意しております。
1型糖尿病、血糖値を下げる薬を使っても十分な効果が得られない2型糖尿病については、インスリンを自己注射するインスリン療法を導入します。
これら薬物療法を開始してからも、食事療法・運動療法は継続してください。

糖尿病の方は以下にもお気を付けください

血糖値が下がりすぎる「低血糖」

インスリン、SU薬などの薬を使用する場合には、血糖値が異常に低くなる「低血糖」に注意する必要があります。血糖値が70mg/dLより低い、または血糖値が70mg/dLより高くても低血糖症状がある場合に、低血糖と診断されます。
主な症状として、強い空腹感、冷や汗、震え、動悸、目のかすみなどが挙げられます。重症化すると、意識がもうろうとしたり、痙攣を起こしたりするなどして、昏睡状態に陥ることがあります。
ただし、特別な症状がないまま「無自覚性低血糖」になるケースもあり、この場合は突然に意識障害などの重い症状が現れます。
低血糖になった時には、ブドウ糖を含む食べ物か砂糖、あるいはブドウ糖を含むジュースを摂取する必要があります。ブドウ糖や砂糖以外の糖分の摂取では、効果の発現が遅れるため注意が必要です。15分が経過しても症状が改善しない場合には、再度同じものを摂取しますが、それでも回復しない場合には、すぐに医療機関を受診してください。

糖尿病の方が体調を崩すことで起こる「シックデイ」

糖尿病の方が風邪をひいたり、体調が悪くて食事が食べられなかった場合には、著しい高血糖になったり、低血糖になる可能性があるため、血糖値を下げる薬の調整などが必要になることがあります。そしてこのような状態を「シックデイ(sick day)」と呼びます。
シックデイを迎えた時にどのように薬を調整するか、予め医師と相談して決めておく必要がありますが、基本的には以下のような対応をとっていただきます。

シックデイを迎えた時の基本的な対応

①安静と保温に努め、早めに医療機関に連絡をしてください。
➁インスリン療法を行っている人は、自己判断でインスリンの投与を中断しないでください。
③水、お茶などで十分に水分を摂取し、脱水を防いでください。
④食欲がなくても、おかゆ、うどん、果物、ジュースなどで炭水化物を補給してください。
⑤内服薬を使用している人は、その量の調整が必要な場合があるため、予め主治医と相談しておきましょう。
⑥ご自身で血糖値を測定している人は、こまめに血糖測定をして、血糖値と病気の状態を確認してください。